マンション管理業の中間マージンが、どのようなシステムになっているのか質問をいただきましたので、少しだけお話ししたいと思います。
中間マージンとは？
まず、中間マージンとは何かというと、少なくとも本記事内では、マンション管理会社が下請業者に仕事を丸投げしているにも関わらず、下請業者の金額に利益を上乗せして管理組合からお金を貰っている、という状況が前提です。具体的には、管理委託契約内の設備保守業務だったり、工事発注のことです。
この場合、多くの方が「おかしい」「卑怯だ」と思われると考えますが、正直に言えば、中間マージンを取るのはマンション管理会社に限ったことではありません。そもそも、孫請などが存在している業界では、中間マージンを取るのは会社維持に必要なことだと思いますがいかがでしょうか？
正確に言えば、目の前に見える形で、しかも自分の財産が中間マージンとして取られていることに憤りを感じているのではないかと思うのです。
そこで、この中間マージンを排除するにはどのような方法があるのかを考えたいのですが、まずは、管理組合と保守業者が直接契約することで発生する懸案事項を理解する必要があります。
費用が安くなる「可能性」がある
多くのマンション管理会社は、下請け業者に対し多数の管理物件をまとめて業務依頼していることがほとんどですので、スケールメリットが出ている場合があります。こうなってくると、下請け業者としては、いつ切られるかわからない管理組合との直接契約より、マンション管理会社の下請けに入っていた方がメリットがあるわけです。よって、マンション管理会社が支払っている業務費用（原価費用）で管理組合が直接業務を引き継ぐことは難しくなります。
つまり、総会なのでマンション管理会社に対し原価（下請け業者への支払額）の開示を求めている組合員がいるとすれば、少しズレていることを理解する必要があります。スーパーに行って卸値を聞き出そうと怒っているのに等しい行為です。仮に卸値を教えてもらったところで、スーパーが得ている利益が分かるだけで、個人が同じ値段で商品を購入できるわけではないのですから・・・
業者交渉を直接行う必要がある
管理組合と業者の直接契約では、値段交渉はもちろん、業務の詳細や報告書精査、不備発覚時の対応など、全てを管理組合（理事会）で行う必要があります。もちろん、そのようなことが起こるのは稀ですが、それでも管理組合の負担は大きなものになります。
業者側の負担も同じですので、その手間賃としてマンション管理会社へ提示する見積より、管理組合へ直接提示する見積額の方が高額になる場合もありますし、そもそも断れることすらあります。マンションはよく「手離れの悪い客」として取り扱われます。これは、実施前・作業中・完了後に細かなことで何度も手間を取られるという意味であり、特に完了後に難癖つけられることを嫌がった言葉です。ワンオーナー物件と違い、何十人とオーナーがいるわけですから当然と言えば当然です。
業者変更、倒産時の対応
もしも、業者の仕事が雑でトラブルになった、倒産した、といった業者変更のリスクやその労力も管理組合が負う必要があります。マンション管理会社へ依頼しておけば、マンション管理会社へクレームを入れるだけで済みますので、管理組合の手間とリスクは無くなります。ワンオーナー物件ではないマンション管理組合にとって、最も大きなメリットです。
注意点
上述の通り考えていくと、清掃や各種メンテナンスを自社で行っているマンション管理会社が最も有利ということになりますが、実際はそうでもありません。なぜなら、比較検討できる環境にないからです。自社で行っている業務を他社の金額に合わせて値下げする会社はありませんので、マンション管理組合の自主性がない限り、「言い値」で発注してしまっているケースも多くありますので注意が必要です。
管理組合が取るべき行動
上述した通り、管理組合にとって中間マージンは悪いことばかりではありません。ですが、昨今の各種値上げに伴い、少しでも管理委託費を抑えたいと考えているマンション管理組合は多くあります。そもそも、マンション管理会社が管理組合と業者が直接契約することを容認し、ある程度のサポートを約束したら費用削減が可能になるのですが、それをしているマンション管理会社はありません。なぜかというと、利益が減り、手間が増えるからです。特に大手管理会社では、利益優先となっているので、このような発想すら出てこないでしょう。
ですが、実際は業者とのトラブルが少ない項目とそうでない項目があり、マンション管理会社の手間もそう大きくはないので、やろうと思えばできるはずなのですが・・・
これからのご質問などあれば、分かる範囲でお答えしていきたいます。
